福岡県久留米市の”まさあき耳鼻咽喉科と美容のクリニック”です。
「鼻炎がなかなか良くならない」「咳が長引く」「喉の違和感が続く」――このような症状でお困りの方は少なくありません。近年、これらの症状の背景に、アレルギー性鼻炎・喘息・咽喉頭酸逆流症(LPR)が互いに影響し合っている可能性が注目されています。
今回は、2025年に国際医学誌 ”Ear, Nose & Throat Journal”に掲載された論文をもとに、最新の知見をわかりやすく解説します。
咽喉頭酸逆流症(LPR)とは?

LPRとは、胃の内容物(胃酸や消化酵素など)が食道を越えて喉(咽頭・喉頭)まで逆流する状態です。
代表的な症状には以下があります。
- 喉の違和感・つかえ感
- 慢性的な咳・咳払い
- 声がれ
- 喉のイガイガ感
胸やけを伴わないケースも多く、自覚されにくい「サイレント逆流」が問題になることもあります。
論文が示した3つの重要な関連性
① 咽喉頭逆流症(LPR)とアレルギー性鼻炎
論文では、LPRのある方はアレルギー性鼻炎を合併しやすく、逆に鼻炎症状も重くなりやすいことが示されています。喉まで逆流した内容物が鼻や咽頭の粘膜を刺激し、慢性的な炎症を引き起こす可能性が指摘されています。
▶ 鼻炎治療をしても改善しない場合、LPRの存在を疑う視点が重要です。
② 咽喉頭逆流症(LPR)と喘息
LPRは、コントロール不良の喘息や慢性咳嗽と強く関連していることが報告されています。
逆流した内容物が微量に気道へ影響することで、
- 気道の過敏性亢進
- 咳反射の増強
- 喘息症状の悪化
を引き起こすと考えられています。
▶ 咳が長引く喘息では、呼吸器だけでなく「喉・逆流」の評価も重要です。
③ アレルギー性鼻炎と喘息(ユナイテッド・エアウェイ仮説)
本論文でも強く支持されているのが、「上気道と下気道は一体である」という考え方です。アレルギー性鼻炎があると、喘息の発症リスクや重症度が高くなり、鼻炎を適切に治療することで喘息コントロールが改善する可能性が示されています。
▶ 鼻の治療は、実は「肺の治療」でもあります。
非酸性逆流という新しい視点
近年注目されているのが、胃酸だけでなくペプシンや胆汁酸といった「非酸性成分」による影響です。
これらは酸が強くなくても粘膜障害を起こし、
- 鼻炎
- 喉頭炎
- 喘息悪化
に関与する可能性が示唆されています。
▶ 胃薬だけでは改善しない症状がある理由の一つと考えられます。
当院では、
”なかなか治らない鼻炎”や”長引く咳や喉の違和感” といった症状に対して、鼻・喉と逆流との関係を意識した評価を行っています。
症状の経過や診察所見から、咽喉頭逆流症(LPR)や逆流性食道炎が関与している可能性が考えられる場合には、その視点で診察を行い、生活指導や今後の対応についてご説明しています。
まとめ
- アレルギー性鼻炎・喘息・咽喉頭逆流症は互いに影響し合う
- 一つだけ治療しても症状が残ることがある
- 全体を見渡した診療が、症状改善の近道になる
References
Correlation Between Allergic Rhinitis, Asthma, and Laryngopharyngeal Reflux Disease: A Systematic Review
Awad et al.
Ear, Nose & Throat Journal, 2025